食品トレー用ドリップシート(トレーマット)の選び方! 構造・素材・用途別に見る吸水シートの技術
Date 2025.08.25

私たちは、食品から発生するドリップを吸収するドリップシート用不織布を開発しているチームです。
食品業界では、鮮度保持と衛生管理が品質を左右し、その一翼を担うのが吸水シート。
スーパーや飲食店では、見た目の清潔感が購買意欲に直結します。
ドリップシートは、余分な水分を吸収し、細菌の繁殖やカビの発生を抑制。
食品の安全性を守る資材といえます。
さらに、食品パッケージ全体では、結露水や油分を吸収し、輸送や保管の効率化を実現。
不織布製品は、衛生的な包装を支える重要な存在です。
この記事では、食品トレー用ドリップシート(トレーマット)の選び方を、構造・素材・用途の観点から詳しく解説。
加えて、関連する吸水・吸油資材や、当社製品「パルクロス」の特長も紹介します。
▼この記事の構成
1. ドリップシートの基本と役割
2. 吸水シートが鮮度と衛生に与える影響
3. 構成タイプ別の特徴
- 単層タイプ(スタンダード)
- 複層タイプ(デラックス)
- パッドタイプ(SAPシート)
- 油吸収タイプ
- 意匠性・高級感重視タイプ
- ロール・シートタイプ(バックヤード用途)
4. 用途別の選び方(事例入り)
- 4-1. 生鮮魚・刺身
- 4-2. 精肉
- 4-3. 惣菜・フライ
5. 素材構造と吸水メカニズム
6. パルクロスの特徴
7.まとめ
1. ドリップシートの基本と役割
食品トレー用ドリップシート(トレーマット)は、肉や魚、野菜などの生鮮食品から出る余分な水分を吸収する資材。
トレーの底に敷くだけで簡単に使え、見た目や衛生状態を維持できます。
役割は単なる吸水にとどまらず、パック内の水分滞留を防ぎ、細菌やカビの発生を抑制。
結果として、鮮度保持と衛生性の確保に大きく寄与します。
さらに、見た目の美しさや食感の維持にも効果的。
例えば、刺身や精肉では、ドリップが表面に残ると色調が悪化し、購買意欲を損なう恐れがあります。
ドリップシートはこうした課題を防ぎ、販売機会の損失を減らす手段といえます。
歴史を振り返ると、1960年代に登場し、精肉や鮮魚の販売方法の変化とともに普及。
1970年代には家庭用冷蔵庫の普及で鮮度保持ニーズが高まり、
1980年代以降はスーパーのセルフ販売拡大とともに市場が成長しました。
1990年代には複層構造や逆戻り防止機能を備えた高機能タイプが登場し、
2000年代には環境対応や食品安全への配慮が求められる時代に。
現在では、食品トレーに適したドリップシートは、吸水性・衛生性・見た目の清潔感を
兼ね備えた重要な資材といえます。
出典:日本不織布協会「不織布講座『用途編』市場開発史」より

2. 吸水シートが鮮度と衛生に与える影響
吸水シートは、食品から出るドリップを素早く吸収し、浸水を防ぐ役割を担います。
これにより、細菌やカビの発生を抑え、鮮度と衛生を長期間維持。見た目の美しさや食感の保持にも効果を発揮します。
ドリップが残ると色調が悪化し、購買意欲を損なう恐れがあります。
吸水シートはこうした課題を防ぎ、販売機会の損失を減らす手段といえます。
さらに、食品ロス削減にも寄与。
例えば、あるスーパーでは刺身パックに高吸水性シートを導入し、
陳列時間が延びても鮮度を維持できた結果、売上向上につながった事例があります。
近年、食品トレーにおけるドリップシートの重要性は一層高まっています。
衛生性や安全性の確保が強く求められ、消費者は見た目の清潔感を重視。
鮮度保持性能は購買意欲に直結するため、逆戻り防止や抗菌性を備えた高機能タイプが市場で評価されています。
3. 構成タイプ別の特徴
ドリップシートは構造と素材の組み合わせで性能が大きく変わります。
吸水速度、保持量、逆戻り抑制、通気性、表面強度のバランスが選定の重要なポイントです。
ここでは代表的なタイプを順に整理します。
3-1. 単層タイプ(スタンダード)
単層タイプは、最もシンプルな構造を持つドリップシート。
パルプやレーヨンを主素材とする不織布で構成されます。
パルプは毛細管現象による高い吸水性を発揮し、比較的低コストで調達可能。
レーヨンは柔らかな風合いと吸水性を備え、表面強度の確保にも有効です。
このタイプの特長は、コストを抑えやすく、幅広い用途に対応できる点。
ただし、逆戻りが起きやすく、吸収量に限界があるため、大量のドリップには不向きといえます。
さらに、吸収した水分が表面に透けやすく、見た目の悪化を招く場合も。
短時間展示や軽負荷用途での使用に適しています。
歴史を振り返ると、1960年代に登場した初期の食品トレー用ドリップシートは、この単層タイプが主流。
精肉や鮮魚の販売方法の変化とともに普及し、スーパーのセルフ販売拡大に合わせて需要が高まりました。

3-2. 複層タイプ(デラックス)
複層タイプは、吸収層とフィルム層を組み合わせた構造を持つドリップシート。
フィルムは逆戻りを防ぎ、見た目の清潔感を長時間維持します。
冷蔵陳列や長時間展示に適し、精肉や刺身で広く採用されるタイプです。
吸収層にはパルプやレーヨンを用いた不織布を使用。
フィルムは必要な水分だけを透過させる設計で、食品の乾燥を防ぎながらドリップを効率的に吸収します。
1990年代以降、複層タイプは市場の主流となり、逆戻り防止や隠蔽性を高めるため、
発泡フィルムや立体開孔フィルムを組み合わせた製品も登場しました。

3-3. パッドタイプ(SAPシート)
パッドタイプは、高吸水性樹脂(SAP)を封入し、大量の水分を吸収できる構造。
水分をゲル化して閉じ込めるため、逆戻りが少なく衛生的に保持できます。
冷凍や解凍、チルド輸送など低温物流に対応し、長距離輸送でも鮮度保持に有効。
ただし、初期吸収が遅く、食品との接触面に水分が残る場合があります。
コストも高めで、特定用途に絞った採用が一般的です。

3-4. 油吸収タイプ
油吸収タイプは、揚げ物や惣菜から出る余分な油を効率よく吸収するドリップシート。
パルプやレーヨンを主体とし、吸油加工を施した構造で、見た目の清潔感と食感を維持します。
惣菜パックや弁当の底に敷くことで、べたつきを防ぎ、酸化や変色のリスクを低減。
水分吸収力は低く、油分除去に特化しているため、用途は限定的です。

3-5. 意匠性・高級感重視タイプ
意匠性を重視したタイプは、カラー不織布や模様加工を施し、食材を美しく見せる構造。
ドリップが目立ちにくく、売場での印象を高めます。
高級魚や寿司ネタ、精肉のプレミアムラインで採用され、付加価値を演出。
葉の形に抜いたシートや、鮮度保持フィルムと絵柄を組み合わせた製品もあります。
吸水性能は標準的で、コストは高めですが、見栄えを重視する場面で効果を発揮します。

3-6. ロール・シートタイプ(バックヤード用途)
ロール・シートタイプは、包む・敷く・拭うといった多用途に対応。
バックヤードでの前処理や仕込み工程で扱いやすく、抗菌加工や作業性に配慮した仕様が選ばれます。
可搬性やカット性も評価軸。作業手袋や器具との相性を確認し、毛羽落ち低減や湿潤強度の安定化を重視します。す。
可搬性やカット性も評価軸になります。
作業手袋や器具との相性を確認し、毛羽落ち低減や湿潤強度の安定化を重視します。

4. 用途別の選び方(事例入り)
ドリップシートは、食品の種類や販売環境によって求められる性能が異なります。
ここでは、生鮮魚・精肉・惣菜といった主要な用途ごとに、選定のポイントと導入事例を紹介します。
自社の取り扱い商品や陳列条件に近いケースを参考にしてください。
4-1. 生鮮魚・刺身
生鮮魚や刺身では、表面に水分が残ると光沢や色が損なわれ、鮮度感が低下します。
速乾性と逆戻り防止のバランスが重要で、表層の平滑性も評価対象。
展示時間が長い場合は、複層タイプのドリップシートが有利です。
吸水量が過大だと乾きすぎの印象を与えるため、フィルムの透過制御で必要量だけ吸わせる設計が求められます。

事例:あるスーパーでは、刺身パックに複層タイプを採用。
逆戻りを防ぎ、色調保持が改善され、陳列時間を延ばしても鮮度感を維持できたことで、廃棄率が低下しました。
4-2. 精肉
精肉では、ドリップの逆戻りと臭気管理が課題。消臭機能や保持層の工夫で、バックトレーへの漏れを抑制し、清掃頻度の低減にもつながります。
色差の維持には、接触面での点接触化が有効。表層構造を最適化し、空気の流れを確保することで、変色の進行を遅らせる手法が採用されています。

事例:精肉加工場では、逆戻り防止フィルム付きの複層タイプを導入。
ドリップ漏れが減り、バックトレーの洗浄回数が減少。作業効率の改善と衛生性向上につながりました。
4-3. 惣菜・フライ
揚げ物では油のにじみが見た目を大きく左右します。
油吸収特化タイプを使うことで、包装内のベタつきを低減し、食感の劣化も防止できます。
温度帯の変化が大きいため、短時間での吸収と保持が重要なポイント。
載せ替えや陳列替えの頻度に応じて、坪量やサイズを調整する設計が求められます。

事例:惣菜コーナーで油吸収タイプを導入した結果、パック内の油染みが減少。
見た目の清潔感が向上し、クレーム件数が減ったという報告があります。
5. 素材構造と吸水メカニズム
ドリップシートの性能は、どれだけ効率的にドリップを吸収し、逆戻りを防ぎ、見た目を維持できるかで評価されます。
これらの性能を左右するのが、素材の特性と構造設計。
吸水速度や保持量、表面強度は、どの繊維を使い、どのように接合するかで大きく変わります。
ここでは、主要な素材とその役割、さらに吸水メカニズムを解説します。
パルプエアレイド不織布は、毛細管現象による高い親水性を活かし、速やかな吸水を実現。
片面にフィルムを貼合する設計で、逆戻りを抑え、取り扱いやすさを高めます。
レーヨン不織布はカード法でウェブを形成し、ケミカルボンドやサーマルボンドで接合。
トレーマット用途では、柔らかさよりも表面強度や寸法安定性を重視し、硬めに仕上げる設計が一般的です。
高吸水性樹脂(SAP)は水分をゲル化して閉じ込め、逆戻りを防止。
ただし、初期吸収は遅め。吸収速度と保持量のバランス設計が求められます。
さらに、複層タイプではフィルムの穴あけ加工や貼り合わせ方法が重要。
穴あけには、熱針による溶融開孔、
刃による切り込み、エンボスロールによる開孔の3方式があり、隠蔽性や吸水速度に影響します。
貼り合わせはホットメルト接着が主流ですが、熱融着方式も採用されています。
補足:不織布基材には、スパンボンド、サーマルボンド、エアレイドタイプがあり、用途に応じて選定。
さらに、必要に応じてフィルムや高吸収ポリマーを組み合わせることで、吸水性や逆戻り防止性能を高める設計が一般的です。
次章では、当社が提供する「パルクロス」の特徴と差別化ポイントを詳しく紹介します。
6. 「パルクロス」の特徴
当社のパルプ系不織布「パルクロス」は、レーヨンとパルプという天然由来素材を組み合わせた独自構造を採用。
吸水性と表面強度を両立します。食品との接触面で毛羽立ちが少なく、衛生的に使用できる点も特長です。
用途に応じて厚みや通気性を調整可能。刺身用から精肉用まで幅広いニーズに対応します。
さらに、加工性に優れ、フィルムとの貼り合わせやサイズ調整も容易。
食品トレー用ドリップシートとして、品質と作業性を兼ね備えた設計です。
パルクロスに関する詳細はこちら

7.まとめ
食品トレー用ドリップシートは、単なる吸水材ではありません。
鮮度保持、衛生管理、見た目の美しさを支える重要な資材です。
選定の際には、次のポイントを押さえることが不可欠。
- 用途に応じた性能の最適化
魚介類には速乾性と逆戻り防止、精肉には臭気対策、惣菜には油吸収性。
食品ごとに求められる機能は異なります。
- 構造と素材の理解
パルプやレーヨン、SAPなどの素材特性を理解し、展示時間や衛生性、
見た目の維持に応じて構造を選定することが品質保持の鍵。
- 衛生性と安全性の確保
食品接触面での毛羽立ちや異物混入リスクを抑える設計、適切な添加剤管理など、衛生面での信頼性も重要です。
当社の「パルクロス」は、こうしたニーズに応えるために開発されたパルプ系不織布。
高い吸水性と表面強度を兼ね備え、刺身用から精肉用まで幅広い用途に対応します。
詳細な仕様やサンプルのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
パルクロスに関する詳細はこちら
代表的な「パルクロス」製品例:KS80
項目 | 値 |
坪量 | 80 g/㎡ |
厚さ | 1.6 mm(8.5g/cm²条件) |
吸収量 | 1,800 g/㎡ |
主な特徴
- パルプを主原料としたエアレイド不織布を使用し、ドリップをしっかり吸収
- 表面にレーヨン層を配置し、毛羽立ちを抑制
- 1層構造で作業性が高い(フィルムレス)
- 魚・肉・惣菜のドリップ吸収に対応、揚げ物にも使用可能
- コシがあり扱いやすい
- 色バリエーションあり(食品の見栄えに合わせられる)