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布おしぼりと紙おしぼりの使われ方から見える日本の衛生文化

Date 2026.04.14

布おしぼりと紙おしぼりの使われ方から見える日本の衛生文化のサムネイル

私たちは、紙おしぼりに使われる不織布を開発しているチームです。

飲食店で提供されるおしぼりには、布おしぼりと紙おしぼりの2つがあります。
布おしぼりは、貸しおしぼりという仕組みのもと、洗浄や保管、配送を専門業者が行いながら、
現在も多くの飲食店で使われています。
厚みや手触り、水分量といった違いが、来店時の使用感に関わる点として評価されて、
布おしぼりが使われ続けている背景のひとつになっています。

一方で、営業時間帯や提供方法の多様化に伴い、紙おしぼりが選ばれる場面が増えています。
使い切りであることや、提供・回収の手間が少ない点が、運用面で選ばれる理由のひとつになっています。

この記事では、おしぼり用途に使用されている素材や製造工程、シート構造の違いが、
実際の使われ方にどう表れているのかを、不織布を開発している立場から見ていきます。

▼この記事の構成

1. おしぼりが日本で定着してきた背景

2. 紙おしぼりが広がっていった背景

3. 日本における紙おしぼりの多様な使われ方

4. 地域や国、場面によって異なる紙おしぼりの使われ方

5. まとめ


1. おしぼりが日本で定着してきた背景


おしぼりの起源は、平安時代の『源氏物語』にまで遡るといわれています。

江戸時代になると、旅籠(はたご)で旅人におしぼりを出す習慣が定着しました。
当時の日本は湿度が高く、旅人は草履(わらじ)を履いて長距離を歩いていたため、
手足が埃や汚れでいっぱいになりがちでした。
宿に到着すると、桶に浸した手ぬぐいを渡され、それで手や足を拭いていたのです。

この「絞って使う手ぬぐい」から、「おしぼり」という呼び名が生まれました。
その後、おしぼりは旅館や茶屋、飲食店へと広がっていきます。
戦後には居酒屋や喫茶店が増えたことで需要が高まり、
現在につながる「おしぼりレンタル業」も、この流れの中で誕生しました。

<江戸時代の旅籠で、手足を清めるために使われていた手ぬぐい(イメージ)>

このようにおしぼりは、日本の飲食店文化の中で定着してきたものです。
手を拭くという行為は、食事の前に手を清め、気持ちを切り替える動作として受け入れられてきました。
洗って繰り返し使える布素材は、水分を多く含ませることができ、手全体を包み込むように拭く用途に適していました。

布おしぼりを季節によって、温めたり冷やして提供する、おしぼりトレーに載せて提供する様子は、
単なる消耗品ではなく、お客様へのおもてなしになっています。

一方で、布おしぼりは回収や管理が伴うので、すべての業態にマッチするとは言えません。
このような背景から紙おしぼりが選ばれる場面も広がっていきます。


2. 紙おしぼりが広がっていった背景

日本で紙おしぼりが本格的に普及し始めたのは、1960年代後半です。
パルプ系不織布を用いたワンウェイタイプの紙おしぼりは、1967年に試作され、
1973年には全国販売が始まりました。
現在一般的に見られる個包装の紙おしぼりの形や使われ方は、この頃にかたちづくられていったといえます。

ただし、紙おしぼりの登場は、布おしぼりの置き換えではありませんでした。
布おしぼりは、それ以前から洗浄や回収の仕組みの中で使われており、
当時の飲食店やサービス現場では、一定の衛生管理のもとで運用されていました。
それでも紙おしぼりの市場が伸びていった背景には、使い捨てであることや、
手に取った時に未使用だとわかる安心感が積み重ねられていったことが要因と考えられます。

戦後の日本では、衛生意識の高まりとともに、飲食店の数や提供形態も大きく変化していきました。
また、限られた人手で多くの客に対応する必要が生じ、準備や回収、洗浄にかかる手間を
減らすことが求められる場面が増えていきます。
こうした業務の効率化や利便性を重視する流れの中で、紙おしぼりは徐々に日常の中に組み込まれていきました。


3. 日本における紙おしぼりの多様な使われ方

日本で使われている紙おしぼりには、さまざまなタイプがあります。
汎用品として広く使われているものから、簡易なお手拭き、高級感を重視したものまで、
用途や場面に応じた紙おしぼりが使われています。

サイズや形状、素材、提供のされ方もまちまちで、ひとくちに「紙おしぼり」と呼ばれている中には、
異なる考え方で設計された製品が並んでいます。

以下では、紙おしぼりの使われ方について、いくつかの例を挙げながら見ていきます。

3-1. 紙おしぼりはいろいろな製品がある

日本で使われている紙おしぼりには、さまざまなタイプがあります。
紙タイプ、不織布タイプといった大きな分類はありますが、実際にはその中にさまざまなつくり方が存在しています。

たとえば紙タイプでも、単層のもの、多層構造のもの、エンボス加工が施されたもの、
フィルムを挟み込んだものなど、構成はいろいろです。
価格帯も幅があり、「紙タイプ=簡易的」と単純に言い切れるものではありません。

不織布タイプも同様です。
スパンレースの中では、主原料にコットンやレーヨンを使用した強度を重視したものもあれば、
エアレイドのように強度とのバランスを取りつつ、保水性を活かした構造もあります。

形状にも、考え方の違いがあります。
丸められた形状のものは、手に取ったときに厚みやボリュームを感じやすく、
使用感や印象を重視した場面で使われています。
一方で、平らに折られた形状のものは、保管や配置のしやすさが考慮され、
限られたスペースでの運用に適した場面で使われることがあります。

さらに、紙おしぼりと対比されがちな布おしぼりについても、レンタルによる提供だけでなく、
店舗で用意される例が見られるなど、使われ方はいろいろです。

このように、飲食店で使われているおしぼりは、素材や構造の違いが単純な優劣につながるものではなく、
用途や価格、提供のされ方に応じて、さまざまな選択が併存してきた製品群だといえます。

3-2. 布おしぼりが使われてきた場面と紙おしぼりの展開

接客の一部としておしぼりを提供する店舗や、拭き心地や存在感が重視される場面では、
布おしぼりが選ばれてきました。
こうした場面では、紙おしぼりは補助的に使われることもあり、布という素材が持つ厚みや質感、
繰り返し使うことを前提とした安心感は、簡単に置き換えられるものではなかったからです。

一方で、紙おしぼりの側でも、こうした場面を意識した製品が少しずつ登場してきました。
厚みや触感を重視したものや、大きめのサイズで扱いやすいものなど、紙(不織布)でありながら、
布に近い使用感を意識した製品が選ばれることも見られるようになります。

現在も、布おしぼりが使われている場面は多くあります。
同時に、紙おしぼりもさまざまな場面で選択されるようになっています。
とくに近年では、使い捨てであることへの安心感や、回収や洗浄を伴わない運用のしやすさが、改めて意識されるようになりました。

3-3. 飲食店以外へ広がった用途

紙おしぼりは、飲食店の店内で使われるものに限られなくなっています。
食事の前後に手を拭くという役割を保ったまま、さまざまな場面で使われるようになってきました。

たとえば、コンビニエンスストアでは、購入した食品を食べる際のお手拭きとして紙おしぼりが提供されることがあります。
短時間で使い切ることが想定された場面では、小ぶりで扱いやすい仕様が選ばれています。

交通機関や航空機の中でも、紙おしぼりが配布される場面があります。
限られた空間の中で、多くの利用者に渡されるため、使い捨ての形が採られています。

イベント会場や屋外での催しでも、紙おしぼりは使われています。
水道設備が十分でない場所や、人が一時的に集まる場面では、配布と廃棄がしやすいことが重視されます。

こうした場面に共通しているのは、短い時間の中で、その場で使われる点です。
紙おしぼりは、用途に合わせて選ばれながら、飲食の場を越えて使われてきました。

3-4. 企画性や演出を意識した使われ方

紙おしぼりは、手を拭くための道具として使われる一方で、提供のしかたによって印象を与える場面もあります。

たとえば、袋に短い言葉が記載されていたり、開封時にちょっとした仕掛けが施されていたりと、
会話のきっかけになるような紙おしぼりが使われることがあります。
キャラクターやイラストをあしらったもの、季節やイベントに合わせて色や意匠を変えたものなど、
見た目に工夫を凝らした製品も少なくありません。

また、香りを付与した紙おしぼりが使われることもあります。
拭いたときの感触に加えて、香りによって気分を切り替えることを意図したもので、
話題性のある取り組みとして使われた例も見られました。

このような紙おしぼりは、日常的なものではないものの、特定の場面では使われることもあります。

3-5. 安全性を前提とした運用と業界の取り組み

紙おしぼりは、直接手に触れる製品です。
場合によっては口元に近い位置で使われることもあり、さまざまな人が使用することを前提としています。
このため、紙おしぼりには一定の安全性が求められてきました。

こうした前提を支えているのが、業界団体による自主的な取り組みです。

紙おしぼりを含むウエットワイパー類については、一般社団法人日本衛生材料工業連合会や、
その傘下団体である日本清浄紙綿類工業会といった業界団体があり、表示や安全性に関する自主基準が整備されています。
また、布おしぼりについても、全国おしぼり協同組合連合会などの業界団体が存在しています。

このような枠組みのもとで、紙おしぼりは、さまざまな場面に合わせて使われながら、日常の中に定着してきました。

3-6. 無料で提供されてきた使われ方

日本では、紙おしぼりが無料で提供される場面が多くあります。

食事の前後や持ち帰り商品の受け取り時など、日常的な利用を前提とした使われ方が多い一方で、
提供の際に追加の対価が求められることは多くありません。

飲食店での食事や、持ち帰りの商品購入、移動中や屋外の催しなど、さまざまな場面で紙おしぼりが使われてきました。


4. 地域や国、場面によって異なるおしぼりの使われ方

おしぼりは、国や地域によって、提供される場面や使われ方が異なります。
食事の前や後に用意される場合もあれば、必要に応じて、限られた場面で提供される場合もあります。

この章では、いくつかの地域や場面に分けて見ていきます。

4-1. 欧米における使われ方

欧米の飲食店では、日本の飲食店のように、席に着いた時点でおしぼりが出されることはほとんどありません。
食事の際には、口元や手元を拭くために、ナプキンが使われることが一般的です。
指先を洗う必要がある場合には、フィンガーボールなどが用意される場面も見られます。

一方で、フォークやナイフを使わず、直接手を使って食事をする場面では、
手の汚れを拭き取るために、おしぼりが用意されることがあります。

4-2.航空機や宿泊施設での提供

航空機内で提供されるサービスにおしぼりの提供が国際線を中心にあります。
機内では、特に食事の前に手を拭く目的で配られることが多く、季節に応じて、
温かいものと冷たいものが使い分けられる例もあります。

同様の提供は、ホテルやスパなどの施設でも見られます。
これらの場面では、手を拭くためというよりも、利用者が落ち着いて過ごすためのサービスとして、
おしぼりが提供されることがあります。

同じおしぼりであっても、提供される場面によってサービスの意味が違ってきます。

4-3. アジア地域に見られる使われ方

アジアや東南アジアの一部の地域では、日本と似た形のおしぼりが提供されている場面があります。
日本食店をきっかけに提供が広がったとされる例もあり、現地の飲食店でもおしぼりが出されることがあります。

一方で、有料で提供される場合や、香り付きのおしぼりが使われることも少なくありません。
外装に色や模様が施されている点も特徴的です。

4-4. 日本における使われ方

日本では、紙おしぼりが日常のさまざまな場面で提供されています。
食事のときだけでなく、移動中や外出先など、生活の流れの中で目にする機会が多くあります。
そして、紙おしぼりは無料で提供されることがほとんどです。

紙おしぼりには、大きさや厚み、触り心地などに違いがあり、提供される場面に合わせて選ばれています。


5.まとめ 

本稿では、紙おしぼりがどのように生まれ、どのような場面で使われてきたのかを見てきました。

紙おしぼりは、布おしぼりが単純に置き換えられて広がったものではありません。
外食や移動、各種サービスの提供といった場面の広がりの中で、その時代の要請に応じながら、
日本の中で定着してきました。

このように地域や国の様子を見比べると、日本では紙おしぼりが生活のさまざまな場面に入り込み、
サービスの一部として提供されていることが分かります。

その積み重ねの中で、2004年には「おしぼりの日(10月29日)」が制定*されました。

紙おしぼりは、清潔さをどのように伝え、どのように共有するのかという点で、
日本の衛生観念や提供文化の一端を、静かに支えてきました。

*手(ten、10本の指)を拭く(29)から(全国おしぼり協同組合連合会制定)


参考情報

・一般社団法人 日本衛生材料工業連合会
 ウエットワイパー類(紙おしぼりを含む)の表示・安全に関する自主基準

・日本清浄紙綿類工業会
 紙おしぼり・ウエットワイパー類の品質管理に関する取り組み

・全国おしぼり協同組合連合会
 貸しおしぼりの運用と「おしぼりの日」に関する情報


補足情報

王子タイムリーでは、王子キノクロスの不織布を使用した紙おしぼりを製造・販売しています。

https://www.ojitimely.co.jp/

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