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カームダウンスペースに求められる音環境とOtocell

Date 2026.03.24

カームダウンスペースに求められる音環境とOtocellのサムネイル

私たちは多孔質吸音材「Otocell」を開発しているチームです。
これまでは、音の発生源を特定しやすい機器を中心に用途検討を進めてきました。

子ども向け施設の音環境も社会的な課題として耳にしており、
過去に保育園での騒音対策を試した経験があります。
当時は教室全体を対象とした取り組みで、施工や運用の面で導入ハードルが高い印象が残りました。
吸音材に詳しく、長くお付き合いのあるお客様からの紹介を通じて、
私たちがそれまで知らなかった「カームダウンスペース」という考え方を知りました。

この記事では、その出会いをきっかけに検討が進んだ経緯と、
カームダウンスペースという用途の中で、吸音材に求められていた要素について記します。

▼この記事の構成

1.   カームダウンスペースという言葉との出会い

2.   保育施設でこれまで検討してきた音対策

3.   カームダウンスペースに求められる条件とOtocell

4.   出会いをきっかけに進んだ検討

5.   まとめ

1.カームダウンスペースという言葉との出会い

きっかけは、音響学会に参加したお客様から聞いたお話でした。
講演内容にあった「カームダウンスペース」が、当社の吸音材と合いそうだ、という話でした。

正直なところ、その場でこの言葉を聞くまで、開発担当者としてカームダウンスペースの考え方を知りませんでした。
教室全体の音環境を改善するのではなく、強い不安やパニックを感じた子どもが
一時的に刺激から離れる小さな空間を指すものが、カームダウンスペースでした。

後日あらためて調べると、カームダウンスペースは一部の先行事例とどまらず、導入が進み始めていることが分かりました。
教育現場に加えて公共施設、交通機関、大規模イベントなど、さまざまな場所での導入事例が見られました。
誰か特別な人のための設備というより、必要に応じて一時的に刺激から距離を取れる場所として、
社会の中に組み込まれつつある考え方だと受け止めました。
教室全体の音量や反響を抑える方法だけでは、対応しきれない状況が現場にあり、
その受け皿として「小さな避難先」が求められていました。

2.保育施設でこれまで検討してきた音対策

カームダウンスペースの話を聞いたとき、過去に経験した保育施設での音対策の試行が頭に浮かびました。
当時は教室内の音の響きを抑えることを目的に、吸音材を使った対策がどこまで有効かを検討していました。
検討を進める中で見えてきたのは、一般的な保育施設の空間で体感できる吸音効果を得ようとすると、
想像以上に多くの吸音材が必要になる点でした。
吸音という考え方自体は理屈として理解できても、教室のような広い空間では必要量と設置範囲が大きくなりました。
その結果、現実の保育現場へそのまま導入するのは簡単ではないという感触が残りました。

この経験から、保育施設全体を対象とした吸音対策は、実務上のハードルが高いものとして捉えるようになっていました。
一方で、カームダウンスペースの使われ方を知り、これまでの捉え方とは大きく異なっていました。
教室全体の環境を変えるのではなく、子どもが強い刺激を感じたときに一時的に身を置く小さな空間をつくるという考え方でした。
常設の施工ではなく、状況に応じて設置や撤去ができることが重視されていました。
さらに、子どもが触れることを前提に、安全性や扱いやすさが重要視されている点も印象に残りました。

カームダウンスペースの取り組みは、まったく新しい技術の話ではありませんでした。
吸音に求められる役割と、対象とする空間の範囲を限定することで、これまでとは違う見え方が出てくると感じました。

 

3.カームダウンスペースに求められる条件とOtocell

次に意識したのは、どのような条件が求められているのか、という点でした。

カームダウンスペースは、教室全体を対象とした音対策とは異なり、
子どもが一時的に身を置くための小さな空間を想定しています。
空間全体の音量や反響を抑えることよりも、刺激から距離を取れる状態をつくることが重視されていました。

そのため、吸音材に求められる役割も、教室全体の音量や反響を低減する用途とは異なっていました。
対象は教室内の一部に設けられた小さな空間であり、検討条件として、空間の範囲が明確に限定されていました。

また、カームダウンスペースでは、常設の施工を前提としていない点も特徴的でした。
状況に応じて設置や撤去が行われることが想定されており、運用の中で柔軟に扱えることが求められていました。

設置作業や撤去作業が、現場の負担になりにくいことも重要な条件でした。
大がかりな施工を必要としないことは、実際の運用を考える上で無視できない要素です。

さらに、カームダウンスペースは、子どもが触れることを前提とした空間として考えられていました。
そのため、素材に触れたときの感触や、取り扱い時の安全面についても配慮しやすいことが求められていました。

こうした条件を踏まえたとき、Otocellの素材特性が自然に当てはまる点がいくつか見えてきました。
Otocellは、パルプを主原料とした多孔質構造の吸音材です。
Otocellは軽量で、仮設での設置がしやすい特性を持っています。
撤去も比較的容易であり、設置と撤去を繰り返す使われ方にも対応しやすい素材です。
また、Otocellは、触れたときにチクチクすることがありません。
繊維を吸い込んでしまった場合のリスクも低く、子どもが触れることを
前提とした空間で扱いやすい特性を備えています。
吸音性能についても、カームダウンスペースのような小さな空間であれば、
求められる役割に対して対応できると考えました。

カームダウンスペースという用途に対して、Otocellは新しい役割を与えられたというよりも、
もともとの素材特性が、この使われ方に無理なく当てはまった、そう感じています。

4.出会いをきっかけに進んだ検討

カームダウンスペースでの活用について具体的な検討を進める中で、
浜松市内の幼稚園において、Otocellが使われている状況を確認する機会がありました。
この園では、新たに小さな部屋のような空間を設けるのではなく、教室内に既にある収納棚を利用し、
その側面に吸音材を仮設で設置していました。
使用されていたのは、Otocell(10mm)です。

対象としていたのは、教室全体の音環境ではありません。
子どもが一時的に身を置くことのできる、限られた小空間です。
収納棚の内部は、自然と視界が絞られ、周囲からの刺激を受けにくい場所になります。
その空間の側面に吸音材を配置することで、音の反射や響きを抑える工夫がされていました。

設置方法も、恒久的な施工を前提としたものではありませんでした。
日常の運用を止めることなく、必要に応じて設置や撤去ができる形が採られています。
既存の家具を活用している点も、現場で無理なく続けられる工夫の一つだと受け止めました。

浜松市内の幼稚園での実例。収納棚の側面にOtocell(10mm)を仮設で設置した様子。

今回の確認は、教室全体の音環境を評価することを目的としたものではありません。
カームダウンスペースでの活用を想定した条件のもとで、
吸音材がどのような特性を示すのかを把握することを主眼とした取り組みでした。
その中で、一部の壁面であっても音の印象に変化が生じうることが、
現場の声として共有されたものと受け止めています。

ここで、教室全体を対象とした音対策と、カームダウンスペースで想定されている考え方を整理します。

観点

教室全体の音対策

カームダウンスペース

対象範囲

教室全体

限定された小空間

設置

常設前提

仮設・撤去を想定

求められる役割

反響の低減

刺激から距離を取る

運用

施工・管理が必要

日常運用の中で扱う

こうした取り組みの内容は、専門書籍『子どもと音環境』の中でも紹介されています。

同書では、保育現場における音環境の課題や、子どもが安心して過ごすための空間づくりが、
実際の取り組みをもとに記載されています。

Otocellも、カームダウンスペースでの活用事例の一つとして取り上げられており、
その使われ方を示す事例として紹介されています。

学童施設での仮設設置の例(飯能市)。 教室内の一部にOtocellを設置し、限られた空間での使われ方を確認した。

5.まとめ

今回の検討で強く印象に残ったのは、吸音材の使い方そのものというよりも、「こんな用途があったのか」という気づきでした。

これまで想定してきた音対策とは異なり、カームダウンスペースでは、
強い刺激を感じたときに一時的に身を置ける場所が求められていました。
教室全体の音環境を変えることではなく、限られた空間の中で、刺激から距離を取れる状態をつくる。
その考え方は、これまで取り組んできた吸音用途とは、少し異なる視点を含んでいると感じています。

その用途に照らして考えたとき、必要とされる特性がOtocellの特性と
重なりそうだと感じられたことは、技術者として素直にうれしい瞬間でした。
Otocellそのものが困っている場面に役立つかもしれないと思えたこと自体が、
今回の検討の1つの収穫だったと受け止めています。

カームダウンスペースは、誰かを特別扱いするための空間ではありません。
困ったときに少し立ち止まれる場所として使われている点に、
社会の中で必要とされる場面と技術がつながる感覚がありました。

当社のモットーである「常にお客様の満足をいただき、安定した品質を作り込もう。」
この積み重ねがこうした用途にもつながっていくのであれば、技術を続けてきた意味が
違った形で見えてくるように思います。
専門家や研究機関との連携によって、音環境に関する知見が少しずつ積み重なり、
現場での改善方法が広がっていくことを期待しています。

当社としても、Otocellがその一部として役立てる場面が、今後さらに増えていけばうれしいです。

Otocell特設サイトはこちらからご確認ください。
パルプから生まれた、やさしい吸音材。Otocell。

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