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「吸う」を設計する。エアレイド不織布が生み出す多彩な機能

Date 2026.09.15

「吸う」を設計する。エアレイド不織布が生み出す多彩な機能のサムネイル

私たちは、エアレイド不織布の開発を担当しているチームです。

エアレイド不織布と聞いても、どのような製品に使われているのか思い浮かびますか?
すぐに思い浮かぶ方は、あまり多くないかもしれません。
実際には、クッキングペーパーやフェイスマスク、衛生材料、調湿シート、吸音材など、さまざまな製品に活用されています。

先日の展示会では、こうしたエアレイド不織布の可能性を「液体を吸う」「気体を吸う」「音を吸う」という3つのテーマで紹介しました。
一見すると異なる用途に見えますが、その背景にはエアレイド不織布という共通の技術があります。

この記事では、展示会で紹介した製品を例に、私たちが追求してきた「吸う」という機能について紹介します。

▼この記事の構成

1.展示会で紹介した3つの「吸う」
2.液体を吸う
3.気体を吸う
4.音を吸う
5.なぜ同じ不織布が液体・気体・音を扱えるのか
6.BKプロセスとTDSプロセスが広げた可能性
7.技術とお客様の声が生み出した多彩な用途
8.「吸う」を支える技術基盤
9.まとめ


1.展示会で紹介した3つの「吸う」

2026年8月に幕張メッセで開催された「Japan Homecenter DIY SHOW2026」で当社ブースでは、
「液体を吸う」
「気体を吸う」
「音を吸う」
という3つのテーマで製品を紹介しました。

クッキングペーパーやフェイスマスク、調湿シート、吸音材などを並べると、一見するとまったく異なる製品に見えるかもしれません。
しかし私たちは、これらの製品に共通する特徴があると考えています。
それが「吸う」という機能です。

液体を吸う製品では、水や油、薬液などを取り込みます。
気体を吸う製品では、水蒸気や臭気成分、特定のガスなどの吸着や調湿を行います。
音を吸う製品では、空気中を伝わる音のエネルギーを低減し、反響や騒音を抑える役割を担います。
対象となるものは異なりますが、いずれも不要なものを取り込んだり、周囲の環境を整えたりするために利用されている点は共通しています。

また、「吸う」と一言でいっても、求められる役割は用途によってさまざまです。
液体を素早く吸収したい場合もあれば、長時間保持したい場合もあります。
湿度を調整したい場合もあれば、臭いを抑えたい場合もあります。
さらに音の場合は、できるだけ多くの音を材料内部へ取り込み、反射を抑えることが求められます。

そのため、同じエアレイド不織布であっても、原料の配合やシート構造、厚み、密度などを用途に応じて変えながら設計しています。

次章では、まず「液体を吸う」機能について紹介します。


2.液体を吸う

私たちの身の回りには、液体を吸う機能を利用した製品が数多く存在します。
例えば、フェイスマスクやコットンパフは化粧水や美容液を保持する用途で使用されます。
また、おしぼりやウェットワイプは水分や薬液を保持し、衛生や清拭用途に利用されています。

クッキングペーパーは余分な水分や油を吸い取り、トレーマットは食品から出るドリップを吸収します。
また、衛生材料では体液の吸収、生花鮮度保持資材では切り花へ供給する水の保持、芳香剤揮散体では
液体の吸い上げや揮散など、用途によって求められる役割は大きく異なります。
一見すると共通点のない製品に見えますが、これらはいずれも液体をコントロールするために不織布が活用されている例です。

液体を吸う仕組みとして重要なのが、パルプ繊維が持つ親水性と毛細管現象、そしてエアレイド不織布特有の空隙構造です。
パルプ繊維どうしが作る微細な隙間は液体を引き込む通り道となり、水分をシート内部へ取り込みながら広げていきます。

また、エアレイド不織布は繊維間に多くの空隙を持つ低密度構造を形成しやすいことも特徴です。
この空隙構造によって液体を局所的に素早く吸収することができ、クッキングペーパーやトレーマットなどで求められる吸液性能につながっています。

用途によっては、生花鮮度保持資材や芳香剤揮散体のように、液体を安定して吸い上げることが求められる場合もあります。
そのため、用途に応じてシートの密度や構造を調整しながら、最適な吸液性能を設計しています。

さらに、高吸水性樹脂(SAP)を組み合わせることで、より多くの液体を保持することも可能になります。
例えば、衛生材料の吸収体や簡易トイレ用吸収材では、パルプが液体を取り込み、高吸水性樹脂が液体を保持することで高い吸収性能を発揮します。
参考記事:高吸水性樹脂(SAP)とは?シート化技術では何ができるのか活用方法と用途

一方で、吸収量だけが重要とは限りません。
クッキングペーパーでは水や油を素早く吸い取ることが求められます。トレーマットではドリップを吸収しながら食品の見た目や衛生状態を維持することが重要です。
参考記事:食品トレー用ドリップシート(トレーマット)の選び方

また、生花鮮度保持資材では保水した水を花へ供給できること、芳香剤揮散体では液体を安定して吸い上げ続けることが重要になります。

このように、同じ「液体を吸う」という機能であっても、求められる性能は用途によって大きく異なります。
エアレイド不織布は、原料配合や厚み、密度、構造を調整しやすいため、用途に応じた液体コントロール機能を設計しやすいことが特徴です。
展示会で紹介した製品も、それぞれ異なる課題に対応するために開発されたものですが、その根底には「液体を吸う」という共通の技術があります。


3.気体を吸う

エアレイド不織布は、液体だけでなく気体に関わる機能にも活用されています。
例えば、湿度を調整する調湿シートや、臭気成分を吸着する脱臭シート、特定のガス成分に働きかける機能性シートなどがその代表例です。

これらの用途では、不織布そのものが気体を吸収するのではなく、不織布に保持された機能性材料が重要な役割を担っています。
調湿用途では、水蒸気を吸収・放出する調湿材をシート内に保持することで、周囲の湿度変化を緩和することができます。
また、脱臭用途では活性炭や各種吸着材を利用し、臭気成分や対象となるガス成分を吸着します。
参考記事:機能性材料をシート化するTDSプロセスとは 粉体・機能性繊維・シート設計事例を解説

エアレイド不織布は、こうした機能性材料を安定して保持しながら、空気との接触機会を確保するための土台として活用されています。
気体を扱う用途では、吸着性能だけでなく空気が通りやすいことも重要です。
どれだけ優れた機能性材料を使用していても、空気との接触機会が少なければ十分な性能を発揮できません。
そのため、シートの厚みや密度、空隙構造を調整しながら、通気性と機能性を両立させる工夫が行われています。

展示会では、調湿シートや活性炭シートなどを紹介しました。
これらは液体吸収材や吸音材とは異なる製品に見えるかもしれません。しかし、その目的は共通しています。
それは、必要な成分を取り込み、周囲の環境を整えることです。

エアレイド不織布は、用途に応じて材料や構造を変えることで、さまざまな「吸う」を実現しています。


4.音を吸う

音は液体や気体のように物質そのものを取り込むわけではありません。
空気中を伝わる音のエネルギーを材料内部へ取り込み、そのエネルギーを減衰させることで反響や騒音を抑えます。

エアレイド不織布は、多数の空隙を持つ多孔質構造を形成しやすいことが特徴です。
音がこの空隙の中を通過すると、空気と繊維の間で摩擦や抵抗が生じ、音のエネルギーの一部が熱エネルギーへ変換されます。
その結果、音の反射が抑えられ、吸音効果が得られます。
また、厚みや密度を調整することで、対象とする周波数帯域に合わせた吸音性能を設計できるため、さまざまな吸音用途へ展開することができます。

展示会では、パルプ系吸音材「Otocell(オトセル)」を紹介しました。
Otocellは、パルプを主原料とした多孔質構造により、中高音域を中心とした吸音用途に活用されている製品です。
吸音材は、反響音や騒音を抑えるために利用されます。
例えば、会話による反響を抑えたい空間や、音環境への配慮が求められるカームダウンスペースなどへの活用が検討されています。
参考記事:カームダウンスペースに求められる音環境とOtocell
特設ページ:Otocellはこちら

今回の展示会では、参考出展としてペット向けのカームダウンスペースも紹介しました。
犬や猫の中には、周囲の音や刺激に敏感な個体もいます。

こうした環境で吸音材を活用することで、音環境に配慮した空間づくりをサポートできる可能性があります。
液体や気体とは対象が異なりますが、音を吸う用途もまた、エアレイド不織布の空隙構造を活かした応用例の一つです。


5.なぜ同じ不織布が液体・気体・音を扱えるのか

クッキングペーパーやトレーマット、調湿シート、活性炭シート、吸音材。
これらは用途も求められる性能も異なります。
しかし、その多くは同じエアレイド不織布の技術を基盤としています。

その理由の一つが、エアレイド不織布が持つ多孔質構造にあります。
エアレイド不織布は、パルプ繊維を空気中で分散させて積層するため、繊維の間に多くの空隙を持った構造を形成しやすいことが特徴です。
液体用途では、この空隙が液体の移動や保持に役立ちます。
気体用途では、空気との接触面積を確保しながら機能性材料を保持する役割を果たします。
また、音の用途では、空隙の内部で音のエネルギーを減衰させることで吸音機能につながります。

ただし、空隙があれば何でも実現できるわけではありません。
液体を多く吸いたい場合と、気体と効率よく接触させたい場合では、求められる構造は異なります。
音を吸収する場合も、対象とする周波数帯域によって適した厚みや密度は変わります。

さらに、用途によっては高吸水性樹脂(SAP)や調湿材、活性炭などの機能性材料を組み合わせることもあります。
つまり、エアレイド不織布の特徴は「何でも吸うこと」ではなく、「対象に合わせて吸う機能を設計できること」にあります。
どのようなものを吸いたいのか。
吸った後にどのような役割を持たせたいのか。

その目的に合わせて原料や構造を選び、シートとして形にしていくことが重要です。


6.BKプロセスとTDSプロセスが広げた可能性

用途に応じて「吸う」を設計するためには、原料だけでなくシート構造も重要になります。

王子キノクロスでは、用途や求められる性能に応じてBKプロセスとTDSプロセスを使い分けています。

BKプロセスは、比較的薄いシートの製造に適したプロセスです。
クッキングペーパーやコスメ用途のパフ、フェイスマスク、おしぼり、トレーマット、衛生材料など、多くの身近な製品に活用されています。
薄いシートでありながら、吸液性能や柔軟性、加工性を両立できることが特徴です。
参考ページ:キノクロスプロセス

一方、TDSプロセスは厚みのある不織布や機能性材料を配合したシートの製造に適しています。
例えば、高吸水性樹脂(SAP)を高濃度で配合した吸収体や土嚢シート、高吸水性繊維(SAF)を配合した調湿シート、活性炭シート、芳香剤揮散体、パルプ系吸音材「Otocell」など、多彩な機能性シートへ展開されています。
また、パルプだけでなく合成繊維や機能性粉体などを組み合わせやすいことも特徴の一つです。
そのため、「もっと吸収量を増やしたい」「臭気成分を吸着したい」「音を吸収したい」といった用途ごとの要求に合わせてシートを設計することができます。
参考記事:機能性材料をシート化するTDSプロセスとは 粉体・機能性繊維・シート設計事例を解説
参考ページ:TDSプロセス

BKプロセスとTDSプロセスは単なる製造方法の違いではありません。
用途に応じて必要な機能を形にするための技術であり、王子キノクロスの「吸う」を支える重要な基盤となっています。


7.技術とお客様の声から生まれた多彩な用途

展示会で紹介した製品を振り返ると、クッキングペーパー、フェイスマスク、衛生材料、芳香剤揮散体、調湿シート、吸音材など、用途は実にさまざまです。

これらの製品は、最初から現在の用途を想定して開発されたものばかりではありません。
エアレイド不織布という技術を磨く中で新しいシートが生まれ、その特長を活かせる用途を探索することで、新たな製品や市場へと展開してきたものも少なくありません。

例えば、現在ではクッキングペーパーとして使われている製品も、もともとは別の用途を想定して開発が進められていました。
しかし、シートが持つ吸液性や構造的な特徴に着目し、新たな用途を検討する中で現在の製品へとつながっています。

一方で、技術だけでは新しい用途は生まれません。
実際の現場では、
「もっと吸収量を増やせないか」
「臭いを抑えられないか」
「軽量な吸音材が欲しい」
といった課題や要望があります。
そうしたお客様の声に耳を傾けながら、既存の技術や材料を組み合わせ、新たな用途を形にしてきました。

私たちは決まった製品を作ることだけを目指しているわけではありません。
エアレイド不織布という技術を磨き続けながら、その技術をどのような課題に活かせるのかをお客様と一緒に考えてきました。
展示会で紹介した製品群もまた、技術とお客様の声が結び付くことで生まれてきたものなのです。


8.「吸う」を支える技術基盤

多くの製品は、パルプを主原料としたエアレイド不織布から生まれています。
パルプは親水性を持つ繊維であり、繊維同士が作る空隙によって液体を取り込みやすい素材です。

また、エアレイド不織布は繊維を空気中で堆積させるため、多孔質な構造を形成しやすいという特徴があります。
この構造は液体の吸収だけでなく、気体との接触や音の減衰にも活用することができます。

さらに、王子キノクロスではBKプロセスによる薄物シートから、TDSプロセスによる厚物シートや機能性材料を配合したシートまで、用途に応じた設計を行っています。

液体をより多く保持したい。
湿度を調整したい。
臭気を吸着したい。
音を吸収したい。

求められる機能によって原料や構造、厚み、配合材料は変わります。
私たちが提供しているのは単なる不織布ではなく、用途に応じて「吸う」を設計するための技術基盤です。
液体、気体、音。
対象は異なりますが、その多くはこうした共通の技術基盤の上で生み出されています。


9. まとめ

展示会では、「液体を吸う」「気体を吸う」「音を吸う」という3つのテーマで製品を紹介しました。
クッキングペーパー、フェイスマスク、調湿シート、吸音材。
一見するとまったく異なる製品に見えますが、その背景にはエアレイド不織布という共通の技術があります。

私たちは最初から液体用、気体用、音用の製品を作ろうとしていたわけではありません。
技術を磨き続ける中で、お客様から寄せられるさまざまな課題や要望に向き合い、その用途を広げてきました。
現在では、液体を吸う、気体を吸う、音を吸うという多彩な製品群へと展開しています。

そして、その中心にあるのは「吸う」という機能そのものではなく、お客様が本当に実現したいことを形にするという考え方です。
液体、気体、音。
対象は違っても、まだ気付いていない「吸う」の可能性が残されているかもしれません。

私たちはこれからもエアレイド不織布の技術を磨きながら、お客様の声とともに新しい可能性を探し、新たな価値の創出に挑戦していきます。


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