学生視点で再発見する魅力: インターンシップでのフェイスマスクの探究(静岡県立大上原ゼミ)
Date 2025.02.03

はじめに
インターンシップ活動として、私たち静岡県立大学経営情報学部の上原ゼミ生は、王子キノクロス株式会社で約半年間活動させていただきました。私たちがこのインターンシップを希望した理由は主に二つありました。まず、提供されるインターンシップ内容が非常に魅力的であったことです。王子キノクロス株式会社は、学生が興味を持つ分野や事業に積極的に参加し、実践的な経験を得られる機会を提供してくれました。営業活動や広報活動、新商品開発など、魅力的な活動が多く、これに参加したいという強い思いからインターンシップに参加しました。
二つ目の理由は、王子グループのテレビCMを見たことがあり、この企業に対する関心が非常に高かったからです。「あの王子グループだ!」と説明会で名前を聞いたときの驚きは忘れられません。その認知と親しみをバックに、どのようなビジネスを展開しているのか深く知りたいという思いが強く、インターンに挑む決意につながりました。これらの期待を胸に、私たちは意気込んでこの機会に臨みました。
活動内容決定
インターンシップ活動は最初のミーティングで決まりました。ここで私たち学生は、それぞれの興味関心を発表し、これに基づいて活動内容を決定しました。私たちは美容やコスメが好きで、頻繁におすすめの美容法やコスメの情報交換をしています。最近では、使い捨てフェイスタオルが流行っているとの話題で盛り上がっていました。
また、最初のミーティングの際に工場見学の機会もいただきました。大学生になってからは久しぶりの工場見学で、大きな機械から不織布が作られる様子には大変ワクワクしました。特に印象的だったのは、王子キノクロスのフェイスマスク用不織布の厚みやタオルのような柔らかい触感です。私たちはフェイスマスクを使用する機会も多いため、この触感に触れたことで、自然と「フェイスマスク」をテーマにしようと思い、このインターンシップでの活動に胸が高鳴りました。

王子のフェイスマスクを知る
フェイスマスクの使い心地や、他社製品との違いを理解するために、さまざまなフェイスマスクを実際に試用し、レポートを作成することから始めました。触って感じるだけでなく、実際に使用し、他社製品との比較をすることで、その違いや製品の良さを実感できました。特に、入浴後の「ながら美容」において、髪を乾かしながら使用しても顔から剥がれることがない使いやすさに驚きました。他の多くの製品では、このような使用中に剥がれてしまうことが一般的であるため、この密着性の良さは決定的な強みと感じました。
この経験をもとに、私たちはキャッチコピーを考案しました。「保液性、密着性が高いため、何かをしながら使うことができる」「縦横に伸び、様々に合わせた形にフェイスマスクを変形することができる」という製品の良さを表現するものです。このキャッチコピーを軸に、製品の魅力を広めるため、ホームページ作成にも携わることになりました。

魅力を伝える実験
より良いホームページを構築するため、まず私たちは既存のフェイスマスクに関するページを分析し、課題点を洗い出しました。王子キノクロスの不織布には多くの強みがあるにもかかわらず、その形状や利点を十分に伝えきれていない点が課題でした。そのため、ホームページの改良に関しては、ウェブマーケティングの授業で得た知識を参考にしながら、効果的なキャッチコピーを作成し、製品の魅力を伝える文章を考案しました。フェイスマスクの使いやすさ、特に「ながら美容」として日常の活動中にも使用できる点は、主婦や忙しい学生に人気が出ると感じました。
しかし、文章だけでは王子キノクロスの不織布の特性、つまり保液性や密着性を十分に表現できない可能性があったため、写真や動画の活用が必須と考えました。そこで、「顔マネキン密着実験」と「容器を用いた吸水実験」を企画し、写真と動画を制作することにしました。
顔マネキン密着実験
この実験では、フェイスマスクの密着性を可視化することを目的としました。顔の形状が正確に再現されたマネキンを使用することで、製品の浮きやすさを他社製品と比較しました。使用したマネキンは100円ショップで入手した顔形のものを選びました。この選定により、実験条件を統一し、肌の水分量や個々の顔の形状によるバラつきを排除しました。
実験当日、「フェイスマスクがマネキンに張り付かないのではないか」という不安を抱えつつも実施しました。初回はカメラの固定が不完全であったり、フェイスマスクに含む水分量が不明確であるなど、予期しない問題が発生しました。想像以上に問題が発生し、撮影がうまくいきませんでした。この実験が本当にHPを見る方々にフェイスマスクの良さを伝えられるか、とても不安になりました。また、上手く表現できなかった悔しさも感じました。この経験から準備の重要性を痛感し、改めて改善した上で再度実験を実施しました。その結果、王子キノクロスの不織布を使ったフェイスマスクは驚くほど高い密着性を保持し、動画にしっかりとその特性を捉えることができました。他社製品が剥がれ落ちたタイミングでも、王子キノクロスのフェイスマスクは顔に密着しており、密着性の違いが明確に現れました。剥がれたフェイスマスクを確認すると、他社製品が平らで乾いているのに対し、王子キノクロスの製品は顔の形のまま乾燥しているという興味深い結果となりました。
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容器を用いた吸水実験
この実験では、保液性を視覚的に比較することを目的としました。まず、色を付けた水を用意し、各社のフェイスマスクに浸透させました。これを洗濯ばさみで吊るし、水が滴る速度と量を観察しました。結果として、他社製品のマスクからは水が数分で垂れてきましたが、王子キノクロスのマスクはほとんど水が垂れず、中にしっかりと水分を保持できていることが確認されました。このように、不織布の性能によって大きな違いが生じることを、実験を通じて明らかにすることができました。小中学生ぶりに実験を行い、理科の授業のようでとても楽しかったです。2回目の実験では、私たちが考えた方法がうまくいき、1回目のリベンジを果たせたことで安心感と達成感を味わいました。この成功はとても嬉しい経験となりました。
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コスメティックフォーラム
インターン活動の一環として、私たちはコスメティックフォーラムにも参加しました。ここでは、静岡県の美容企業の方々の成功事例に触れる機会を得ました。その中でも特に印象的だったのは、売ることができないバラを美容製品に再利用するという発想でした。廃棄されるはずのバラから新しい価値を生むことへの挑戦に、私たちは非常に興味を抱きました。フォーラムでは企業ブースに立ち、王子キノクロスの製品を紹介し、営業としての役割を果たしました。緊張しつつも、何度も経験を重ねるうちに自信を持って説明できるようになりました。

最後に
私たち学生は、このインターンシップを通じて、商品広報の流れや方法を学びました。特に、ホームページ作成や著作権についての注意事項、多くの人に製品を知ってもらうための工夫など、新入社員のように一から教えていただきました。挑戦の機会を得られたこの経験は、今後社会に出る私たちにとって大きな財産となりました。これから得た知識を社会に還元していきたいと思います。約半年にわたりフェイスマスク事業に参加させていただき、本当にありがとうございました。
上原准教授より
王子キノクロスの皆様には、協働を通じて、学生に貴重な経験をさせて頂ました。心より感謝申し上げます。
日々の生活で使用して興味関心を持つコスメを題材に、他社製品との比較実験などを通じ、王子キノクロス製のフェイスマスクの特性を明らかにできたことは大変有意義です。加えて、得られた知見をもとに、キャッチフレーズの考案やホームページの作成等といった広報活動にも携わらせて頂くなど、大学での学びの実践の場となりました。参加した学生には、今回の経験を活かして、実社会での活躍を願っております。宜しくお願い致します。
王子キノクロス担当者より
今回のインターンシップでは、静岡県立大学の上原ゼミの皆さんと共に、弊社フェイスマスクの特性や市場での新たな可能性を探求する貴重な時間を過ごしました。学生の皆さんが持つフレッシュな感性や柔軟な発想により、弊社の製品について新たな気づきを得ることができました。
特に、製品の保液性や密着性を検証するための実験結果はこれからお客様に製品を紹介する中で活用していきたいと考えています。また、ホームページの改善提案においても、実用的かつ創造的なアイデアを多数いただきました。デジタルネイティブ世代の情報収集力には刺激を受けました。何より若い世代の皆さんと接することで社内に新たな気づきと活気が生まれたと感じています。
学生の皆さんのおかげで、彼らの視点を通して製品の価値を再発見することができ、大変感謝しております。今後も学生の皆さんや社外の方々との取り組みを通じて、より多くの皆さんと新たなアイデアを生み出せることを楽しみにしております。
皆さん、ありがとうございました。