吸水素材とは?種類・構造・用途別に見る性能差と選び方
Date 2026.06.15
私たちは、エアレイド不織布を開発しているチームです。
エアレイド不織布は、繊維を空気中に分散させて形成する構造を持つ不織布です。
液を受け、吸収し、その後の保持まで担う特性を持っています。
吸水材の設計では、不織布の構造や繊維材料に加え、高吸水性樹脂など、役割の異なる要素を組み合わせます。
こうした組み合わせによって、吸水材の挙動は変わります。ただし、用途によって適した構成は異なります。
この記事では、エアレイド不織布を開発する当社の知見をもとに、吸水素材の構造と性能の関係を整理したものです。
▼この記事の構成
1. 吸水素材とは?用途によって最適な材料が変わる理由
2. 吸水素材の種類一覧|繊維・樹脂・多孔質材料の違い
2-1. 繊維系素材
2-2. 多孔質材料
2-3. 樹脂系素材
3. 吸水性能の決定要因
4. 実用途で見る吸水素材の選び方
4-1. キッチン用ペーパー
4-2. トレイマット
4-3. 衛材向け吸収体
4-4. 吸水マット
4-5. 液体揮散体
5. まとめ
1.吸水素材とは?用途によって最適な材料が変わる理由
吸水素材とは、水を吸収し保持する性質を持つ材料の総称です。
用途によって適した構成が変わるのは、求められる性能が一つではないためです。
求められる性能の違いは、材料の種類だけでなく、目付、厚み、密度、空隙構造といった要素によって、
吸収量、吸収速度、保持力、圧力がかかったときの戻りやすさといった物性の差として現れます。
水が繊維の内部にしみ込むのか、繊維間や空隙にとどまるのかによって、その後の挙動は変わります。
隙間にある水は移動しやすく、材料の中で広がりやすくなります。
一方で、内部にしみ込んだ水は移動しにくく、その場にとどまります。
圧力がかかったときの挙動も、この違いに強く影響します。
移動しやすい水は外へ押し出されやすく、移動しにくい水はそのまま内部に残ります。
その結果、短時間で液を受けることが求められる場合もあれば、吸収した液を外へ出さないことが重要になる場合、
あるいは吸った液を外に出せることが必要な場合もあります。
2.吸水素材の種類一覧|繊維・樹脂・多孔質材料の違い
吸水素材は、繊維系素材、多孔質材料、樹脂系素材に分類されます。
違いのポイントは、吸収後に水がどこに存在し、どう動くかです。
2‑1. 繊維系素材
例:綿、パルプ、レーヨン
特徴:繊維内部にしみ込みつつ、繊維間に広がる。吸収は速いが、押すと戻りやすい。
繊維系素材では、水は繊維内部にしみ込むものと、繊維同士の隙間に存在するものに分かれます。
隙間にある水は移動しやすく、材料の中で速く広がります。そのため、短時間で液を受け止めます。
一方で、繊維間にある水は圧力がかかると外へ押し出されやすくなります。
繊維内部にしみ込んだ水は移動しにくく、外へ出にくくなります。
この違いにより、吸収は速いが、押されると戻りやすい性質になります。
2-2. 多孔質材料
例:スポンジ、セルロース系マット
特徴:空隙全体に広がって保持する。押すと外へ出せる。
多孔質材料は、内部に連続した空隙を持つ構造です。液はこの空隙を通って内部に広がりながら保持されます。
空隙内の水は圧力をかけることで外へ出すことができます。
つまり、広げてためつつ、必要に応じて取り出せる状態です。
このため、液を回収する用途や、再利用を前提とする用途に適しています。
2-3. 樹脂系素材
例:高吸水性樹脂(SAP)
特徴:吸収するとゲル化し、内部に固定される。押しても出にくい。
樹脂系素材では、水を吸収すると材料内部でゲル状に変化し、そのまま保持されます。
ゲル化した水は移動しにくく、圧力がかかっても外へ出にくくなります。
つまり、水は内部に固定された状態になります。
この構造により、多量の液をその場に保持しやすく、外へ出さない用途に適しています。

分類 | 水の取り込み方 | 吸収後の状態 | 圧力がかかったとき | 向いている使い方 |
繊維系素材 | 繊維内部にしみ込む+繊維間に広がる | 内部+隙間に分散 | 押すと外へ出やすい(戻りやすい) | 一時的な吸収、表面処理 |
多孔質材料 | 連続した空隙に入り込む | 空隙全体に広がって保持 | 押すと外へ出せる | 回収、再利用 |
樹脂系素材(SAP) | 内部に取り込みゲル化する | 内部に固定される | 押しても外へ出にくい | 長時間保持、漏れ防止 |
このように、吸水素材は材料によって吸収後の挙動に違いがあります。
水がどこに存在するかによって、その挙動は変わります。
3.吸水性能の決定要因
吸水素材の性能は、材料の種類だけで決まるものではありません。
目付、厚み、密度、空隙構造といった要素が、吸収量や吸収速度、保持力、圧力がかかったときの挙動に影響します。
ポイントは、水がどこにあるかです。
水が材料の内部にあるのか、それとも空隙にあるのかで、その後の挙動が分かれます。
繊維の内部にしみ込んでいるのか、繊維間や空隙に存在しているのかによって、その後の動きが変わります。
隙間にある水は移動しやすく、材料の中で広がりやすくなります。
一方で、内部にしみ込んだ水は移動しにくく、その場にとどまります。
圧力がかかったときの挙動も、この違いに強く影響します。
移動しやすい水は外へ押し出されやすく、移動しにくい水はそのまま中に残ります。
ここが性能の分かれ目です。
4.実用途で見る吸水素材の選び方
実際の用途では、求められる挙動が異なるため、吸水素材に求める性能も変わります。
ここでは、実際に使用される用途を例に、どのような点を見て材料を選ぶかを確認します。
4-1.キッチン用ペーパー
キッチン用途では、水や油が付いた表面を拭き取ります。
短時間で液を処理するため、すばやく受けられることが前提になります。
水分を拭き取る場面では、表面の液を短時間で取り込めることが重要です。
一方で、油や水をある程度の量処理する場合は、すぐに飽和しないことも求められます。
見るポイントは、液を受ける速さと、保持できる量です。
4-2.トレイマット
トレイマットでは、内容物から出てくる液を表面に残さないことが求められます。
液が表面に見えると見た目に影響し、押されたときに再び出てくると品質にも影響します。
そのため、出てきた液をすぐに受けることと、押しても表面に戻らないことの両方を見る必要があります。
また、液を取りすぎると内容物の表面状態にも影響するため、吸い過ぎないことも重要です。
見るポイントは、受ける速さと戻りにくさ、そして吸収量のバランスです。
→トレイマットの選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
「食品トレー用ドリップシート(トレーマット)の選び方! 構造・素材・用途別に見る吸水シートの技術」
4-3.衛材向け吸収体
衛材用途では、吸収した液を表面に出さないことが求められます。
排泄された液が表面に残ると、肌に触れた状態が続き、不快感や肌トラブルの原因になります。
そのため、表面で液をすぐに引き込み、内部に移動させることが必要です。
さらに、内部に取り込んだ後は、押されても表面に戻らないことが重要になります。
見るポイントは、引き込みの速さと内部での保持、そして戻りにくさです。
→高吸水性樹脂(SAP)については、以下の記事で詳しく解説しています。
「高吸水性樹脂(SAP)とは?シート化技術で広がる活用方法と用途」
4-4.吸水マット
吸水マットでは、大量の液をその場に保持することが求められます。
水が周囲に広がると、機能が失われるためです。
取り込んだ液は内部に保持され、押されてもても外へ出さないことが重要になります。
液の拡散よりも、内部保持性能が優先される用途です。
見るポイントは、保持できる量と、外へ出にくいかどうかです。
なお、液体の種類によっては、水は吸わずに油のみを吸収するシートもあります。
→こうした材料の事例については、以下のページで紹介しています。
「油吸収シート『ハトシートNWB』」
4-5.液体揮散体
液体揮散体では、液を保持するだけでなく、空気中に放出し続けることが求められます。
内部に吸い上げた液が表面に供給され、空気に触れることで蒸散します。
そのため、内部から表面へ液を供給し続けられることが必要になります。
液をためるだけでは機能しません。
見るポイントは、供給の安定性と持続性です。
→液体揮散体の具体的な用途については、以下の事例で紹介しています。
「液体芳香剤の揮散体用不織布」

用途 | 何をする | 見るポイント |
キッチン | すぐ拭き取る | 速さ・保持量 |
トレイマット | 表面に出さない | 速さ・液戻り・吸いすぎ |
衛材 | 内部に保持する | 引き込み・保持・戻り |
吸水マット | 大量にためる | 保持量・外に出ない |
揮散体 | 蒸散させる | 供給の安定性 |
5.まとめ
吸水素材は、吸収量や吸収速度、保持力、圧力がかかったときの挙動といった違いによって分類されます。
それぞれの材料では、水が広がる、内部にとどまる、外へ押し出されるといった挙動に違いがあります。
実際の用途では、液をすぐに受ける、表面に残さない、内部にとどめる、大量に保持する、
空気中に放出するといった目的に応じて、見るべき点が変わります。
例えば、エアレイド不織布のように空隙を持つ構造では、液を吸収しながら内部で広げることができ、
用途に応じて吸収と保持のバランスを調整できます。
このように、吸収素材の検討では、吸収量だけでなく、「吸収後に液がどこに存在し、どう挙動するか」を評価し、
用途に適した材料を選定することが重要です。
こうした吸収の挙動については、当社の技術情報ページでも詳しく紹介しています。
→当社技術ページ